2020年度活動報告
今年度は、幼稚園2名、小学校1名、中学校1名、高等学校2名の計6名部会員で、5回の会合を持ちました。昨年度に引き続き、子どもの生活習慣の実態把握からコロナ禍における子どものメンタルヘルスについて着目し、研究を進めてきました。
幼稚園から高校まで、保護者ならびに子どもを対象として、発達段階に合わせて連続的な教育システムの開発を行っていく予定です。また、養護教諭による保健教育に限らず、保健体育科や社会、理科、家庭科等の関連教科との連携も考慮し、縦と横の広がりを意識したカリキュラム作りを目指したいと考えています。
活 動 内 容 | |
第1回 | 活動内容紹介及びメンバー顔合わせと研究計画 |
第2回 | 事例検討 |
第3回 | 高校の実践報告と検討 |
第4回 | 今後の方向性について検討 |
第5回 | 中学校、高校の実践報告と検討ならびに次年度に向けた課題 |
各回の詳細
【第2回】
子どものメンタルヘルスの支援について高校の事例から、自己肯定感の低い子どもへの支援、不安を抱えたときの対応などについて情報共有や教育的支援のアイディアを出し合った。
・これまでに実施している具体的な支援として、「マインドフルネス」、「リラクゼーション」「セルフコンパッション」がキーワードとして挙げられた。
【第3回】
Ⅰ 実践報告(高校体育の実践)
8月末の暑い時期に教室内でできる教材として作成した。
・自分のからだに意識を向ける。
・体の力を抜いてゆったりすることを自覚する
① コリトルボールをやってみよう:コリを感じるところが人によって異なる② 呼吸法:腹式呼吸の実践、ゆったりしている自分に気づく
③ 耳たぶあんま:自律神経を整える
授業を終えて
・生徒の感想から、予想以上にニーズがあることが分かった。
・呼吸法を取り入れていくことの大切さに気付くきっかけにはなった。
・日常の生活の中で継続的に取り入れられるようにするには、何が必要か?
Ⅱ 実践報告を受けて
1 子どもが日常的に実践できるようにするためにはどうしたらよいか?
・習慣づけるための工夫
朝の一定時間に行う、友達と一緒に実践する、授業の最後の1分間に行う。
・子どもが関心を持ちそうな言葉がけ
例えば、人気アニメのキャラクターの言葉「全集中の呼吸」を取り入れてみる。
・モチベーションを上げる
〇〇すると〇〇を得る(ご褒美型)
・意外性
リラックスして、「(授業中ではあるが)寝てもいいよ」
2 何を柱に経年的なものにつなげていくのか?
・「呼吸法」の原理的な理解(腹式呼吸と教式呼吸、情動呼吸と代謝呼吸など) と実践レベルの明確化を示す必要がある。
・マインドフルネスを導入し、こころをしなやかに鍛えていく
・保護者を巻き込んでの実践
保護者への啓発も大切
∗幼稚園の実践:保護者を対象とした「えがお育」の講演会
【第4回】
子どもの心の育て方として、発達段階ごとに柱になるものと一貫して実践していくものを明確にしていく作業が必要である。実践していく中で、子どもの反応を校種間で共有しながら改良していくことも大切である。メンタルヘルスの学習を行う際に、自分をどう支えるか、自分には起こらないかもしれないが、友だちに起こったときにどうすればよいのかという視点が必要である。さらに大人として成長する中で、これから生きるためのヒントになると良いと考える。
また、教材の一つとして「認知行動療法」を導入する際は、学校精神科医やスクールカウンセラーに相談することも必要である。
コロナ禍である今だからこそ「マインドフルネス」の実践が必要と共通認識のもと、継続的に学習の積み重ねが重要であるとの意見があり、次年度の予定を確認した。
小学校: マインドフルネス(6年生対象)の実践
高 校: 体育では、「体つくり」に組み込んで、保健では、労働と健康の単元でメンタルヘルスの学習を予定
小学校の実践など校種間の実践を見学しあうことやマンドフルネスの実践を進めていくうえで、その意義を伝え続けていくことも大切であることを確認した。
【第5回】
Ⅰ 第4回以降の実践報告
(1)中学校の実践報告
・ネガティブ感情を否定しやすい集団
・コロナ禍、また発達段階としてもストレスがたまりやすい状況(友達関係、親子関係、進路など)
① ネガティブ感情にも役割があること、あって当然であること
② 自分の「引き出し」に対処方法を増やしていく
③ マインドフルネスの紹介
(2)高校の実践報告
・労働によるストレスの軽減
・労働者のメンタルヘルスの向上のために何が必要か?
① 働くことと健康
② 労働者のメンタルヘルスの実態
③ メンタルヘルスの維持・向上のために必要なこと(ストレスマネジメント、マインドフルネス、病気への理解と精神医療への早期アクセス)
意見交換
・「たよること」が大切とあったが、どのポイントで頼るのか?「たよること」は難しい。
大切な人が心の不調を訴えたときなのか?「人とつながり話すこと」とあるが、頼るより気づくことが先なのか?
→授業では「たよる」は使っていない。「人〝財″を活用する」
自分の心の変化(ざわつく、そわそわする)に早めに気づくこと
対処の選択肢としての「つながる、話す」
・委員会、係の長になった人の例
メンバーに仕事を振ったり、お願いしたりすることができない
仲が良いように見えて、お願いできない関係なのか
「頼る」こととはどういうことなのか
「お願いする」⇔「お願いされる」Give and take のワーク
ひとには何かしら得意なことがある、自分の売りになるものを見つける
お願いできない人は「悪い」と思っている?
他者の反応を気にする
・本学附属の人の特性として
自分で行いたい、自分で仕事を手放せない
完成度の高いものを求める、やり始めたら大変になってしまう人もいる
附中出身の生徒が外部中出身の生徒に指示を出しにくい(指示を躊躇する)
・集団指導では適さない内容
甘えるのが下手な人
甘えられない人、頼ることができない人、お願いできない人
今年度の実践報告のまとめと次年度の計画
スパイラル的に実践することの意義として、社会経験や精神発達は個々で異なることから、段階的に学習する機会を作ることで、自分事としてとらえる時期が何れ来ることを期待する。
どのように考えても、思っても、考えても受け止め、認めてもらえる時間が提供されること、評価されない、自分をさらけ出せる、自由な時間、心を楽にして受け止めることができる時間の設定は大切である。(自己受容、他者受容)
幼稚園から高校までの実践を一覧表に示したい。その上で、内容の再検討、次の校種への授業内容の申し送りを行う。「柱」に従って、伝え方のポイントをまとめられると良い。
次年度初めまでの課題として、心の健康教育に関わる内容を挙げ(学級指導、学年指導なども含めて)、カリキュラムの一覧表作りを目指していくことを確認した。
参考文献等
「『レジリエンス』を育てる本」藤野 博 (監修), 日戸 由刈 (監修) 講談社 (2015)
「子どものためのマインドフルネス」キラ・ウィリー (著), アンニ・ベッツ (イラスト), 大前 泰彦 (翻訳) 創元社 (2018)
「10代のうちに知っておきたい 折れない心の作り方」水島広子著 紀伊國屋書店 (2014
「ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち(新書版)」おおたとしまさ著 ディスカヴァートゥエンティワン (2019)
「不安や悩みへの対処としての呼吸法」東京有明医療大学 学長 本間 生夫https://www.kobun.co.jp/Portals/0/resource/dataroom/magazine/dl/hoken97.pdf
「セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク」 伊藤絵美 晶文社(2020)
こころの健康副読本編集委員会編「中学校保健体育副読本『悩みは、がまんするしかないのかな』」https://psycience.com/pdf/kokorobookre.pdf
・参考APP「メイスーン」LAVA提供