部会発足以来、部会内で繰り返し議論されてきたことは、「社会的ジレンマをいかに社会科の文脈の中に位置づけ、教材化するか」という点である。全員で分担しながら社会科における先行研究はもちろんのこと、社会学、経済学、工学、心理学等の研究成果も参考にし、社会的ジレンマの全体像を捉えようと努めてきた。
あらためて感じたことは、社会的ジレンマの多方面に渡る浸透度、関心度の高さである。社会的ジレンマを内包する課題は容易に解決されるものではなく、様々な研究成果を結集しなければならないものである。時に戸惑いながらも、自分たちなりの解釈に基づいた実践を提案するところまで漕ぎつけることができたのは本部会の成果であると考える。
本部会が提案してきたいずれの実践においても、社会的ジレンマの考え方を通して社会的な問題の背景や構造に気づき、問題の解決に向けて能動的に関与しようとする子どもたちの姿が報告された。社会的ジレンマの教材化により、子どもたちの社会認識を深め、より良い社会の形成へと向かうことが期待される。一方、今までの実践では教師が提示した社会的課題に基づいて社会的ジレンマを捉え、解決策を提案する段階にとどまる。今後は子どもたちが社会問題を考える際に、問題の背景に社会的ジレンマが隠されていることに自ら気づき、主体的に課題解決に向けて取り組むように促す実践の蓄積が求められる。
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