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【創作表現】中学1年「坊っちゃん」を読んで手紙を書こう

【実践の概要】

教科書では短編でない文学作品は、作品の一部分(冒頭のみ)を取り上げているが、せっかくの文豪の作品を少しでも作品全体として感じさせる読みにし、できれば生徒自らがその先も読み進めることにつなげさせたいということで第一章だけでなく、小説の本格的な展開の場、松山赴任後のいなご事件が書かれている四章を小学館の文庫本「坊っちゃん」を使って各自に読み進めさせることにした。また、主体的な読みとなるよう、読み取ったことをもとに坊っちゃんと清が手紙のやりとりをしているという設定で、登場人物になりきって手紙を書くという創造的活動を取りいれることとした。【つくる学び】のために以下のような目標を設定した。

・登場人物になりきって、別の登場人物に手紙を書く。(Cイ)

・文脈から登場人物の思いや行動を想像したり、語り手とは違う視点に立って考えたりしたことを、整理して伝えたいことが明確になる文面を考える。(Bア)

 

【実践のポイント】

(1)   授業の展開

学習活動 指導上の留意点

1 「坊っちゃん」を読む。

導入:夏目漱石とその時代を知る。(ワークシートに整理)

 

①教科書の「『坊っちゃん』の生い立ち」(一章)を全体で読む。

○清の人柄・坊ちゃんの人柄を簡単にワークシートに書き出

し、全体で共有する。時代や設定・登場人物の特徴をつかむ。

②二章・三章の要約を読む。(松山赴任の場面)

③ 小学館文庫の「松山でのいなご事件」四章

○気に入ったところ(または表現)や面白いと思ったところや後で手紙を書く際に使いたいと思うところ(取り上げようと思うところ)に付箋をつけながら読む。

 

2 四章の「いなご事件」について坊っちゃんか清のどちらかの立場で短い手紙を書く。

①   付箋をつけていたところから、事件の中で手紙の中心として取り上げるところを決め、ワークシートに簡単に書き出し、手紙を書く準備をする。

②「便覧」の手紙の書き方を参考にし、ロイロノートに縦書きで手紙を書いて「『坊っちゃん』の手紙」の提出箱に提出する。

 

3 グループやクラスで共有する。

・パワーポイントや国語の便覧等の資料を使って読む前に夏目漱石や、小説を読む上で必要な時代設定について説明する。

・①では、登場人物や設定をしっかりと把握するよう朗読CDを聴きながら必要に応じて教師が解説を加え、全体で一緒に丁寧に読む

・②で使用する二章・三章の要約を用意しておく。

・③より各自で読み進めるため、小学館文庫「坊っちゃん」を1クラスの生徒分用意する

・授業後、文庫本を返す際、付箋にページ数や行をメモし、自分のワークシートに貼っておく。

・以下の二点を踏まえて手紙を書くよう促す。

―文章中の「何だか清に逢いたくなった」に着目する。

―この事件が起きる前の松山に赴任したばかりの頃のことが書かれてある二章・三章の要約を参考にする。

(2) 生徒の学習の実態と考察

人物像や他の場面からの想起・想像・連想により、「〇〇だったらこんなことを思うだろう。書くだろう」といった内容を創造的に思考し、登場人物になりきって手紙をまとめることができていた。この創造的活動はゼロから何かを創り出すのではなく、読み取ったことを踏まえてであるので、正確な読み取りや、それを基に手紙の文面を考える段階での十分な熟考や吟味が必要であり、そこに創造的思考がしっかりと働く必然性も存在する。逆の視点からすると、読みの正確さや創造的思考が十分であるかという点も、この創造的活動によって創られた作品に反映され、それらが十分にできている手紙は良いものに仕上がっている。創造的活動が、読みのふり返りや評価にもつながることを示唆していると言える。

参考文献

「坊っちゃん」小学館文庫 夏目漱石著   「漱石日記」岩波文庫 夏目漱石著(平岡敏夫編)

「文豪ナビ夏目漱石」(非売品)新潮文庫 木原武一・島内景二の著書の部分

「英語教師夏目漱石」 新潮選書 川島光希著  「漱石俳句探偵帖」 小学館文庫 半藤一利著

 

 

テーマ:「小中高大の接続を意識した開発研究」     2021年度報告 子どもの心とからだの発達部会

子どもの心とからだの発達部会

部会長 附属幼稚園 渡邉 満美
附属幼稚園 杉浦 真紀子
附属小学校 江部 紀美子
附属中学校 近藤 久美子
附属高等学校 土方 伸子
附属高等学校 増田 かやの

(1) 本部会の課題
本部会では、子どもたちの学校生活の様子や支援の必要な場面、背景となる要素などの情報を共有しながら「幼稚園から高校まで子どものからだとこころの発達を支える視点とは何か」ということを、様々な視点からアプローチすることで探っていきたいと考えた。
キーワード: 発達段階、支援、健康課題、生活習慣(食・睡眠・生活リズム)、メンタルヘルス 適時性 ・マインドフルネス ・メンタルケア・レジリエンス

(2) 本部会の取り組み
本部会は2016年よりはじまり、メンバーの構成に変更はあるものの、養護教諭が中心となり、学級担任、栄養教諭等も加わりながら、幼小中高の教員で部会は構成されている。以下は各年度の取組の中心について記載する。詳細はホームページに掲載する。
2016年、取組の当初は、学校保健に関係の深い養護教諭の他、栄養教諭や学級担任などがいることから、子どもの心をからだ、食事、メンタルヘルスなど、生活の視点から見ていくことが自然と行われ、子どもの姿を中心に、子どもと関わる中で気になっていることについて、語り合った。話し合いの視点は、「食」「疲労と睡眠」「存在感の少ない子どもとは」「孤立しがちな子どもの様子、支援について」等である。幼稚園から高校までの教員がいることから、話し合いの最後は発達を見通す視点についても話し合った。子どもの様子を語り合うことから、子どもたちが見せている姿は、子どもたちの生活と切り離せないということが分かった。また、子どもの姿の背景にある、睡眠・食事・友達関係は、発達を支える視点としてこの先も継続して話し合わなくてはいけないことを確認した。
2017-19年、昨年話し合った睡眠・食事・友達関係の中から、子どもたちの活動の原動力となる、睡眠に重点をおき進めた。これまでの睡眠の実践例を検討し合うことなども行った。睡眠行動から望ましい生活習慣を自律的に行うことができる子どもの育成を目指し、 子どもたちから「睡眠時間を削ってでも大切なことはあるのか?」という問いを大人たちへ問い直す機会を作り、子どもたちの学びを家庭へ波及させる効果をねらうことを考えた。現代の大人社会において、軽視されがちであった睡眠をあえて話題にすることで、睡眠に対する大人の意識も変えたいと考えた。幼稚園では、保護者に睡眠のアンケート調査実施、小学校では自分の生活リズムを見直す視点から、子どもたちとの学習の場をもった。高等学校においては、入学時には勉強についていけるかの焦り、大学受験時には睡眠時間減らしてでも勉強しなくてはという焦り、不安要素からくる生活リズムの乱れが子どもの姿から見られていた。アンケートを行い、実態調査を行った。以下に睡眠に関して取り組んできたこれまでの実践事例を掲載する。
睡眠に重点を置き、子どもの生活に着目した研究を進めてきた。望ましい生活習慣を身につけていくためにも、生活習慣のデータを振り返ることの大切さもあるが、子どもたちにとって自覚を促すような方法で、自分の生活習慣が変わっていく方法を取り入れて進めていきたいと話し合われた。

実践事例)附属校園で過去に取り組んできた睡眠にかかわる学習
①幼稚園 「ねるのきもちいい?」(指導者 養護教諭 渡邉満美)
【内容】子どもたちが眠りについて興味をもち、眠りの気持ちよさを感じることができるように、自由な保育の中で絵本を用いてやりとりを進める実践を行った。同時に、保護者が睡眠について考えるきっかけになるために配布した「保健だより」を資料として掲載。
「保健室のまなざしからとらえた健康教育 ~未来を担う子どもたちにつけたい力・育てたい力~」
P26~P29 全国国立大学附属学校連盟 養護教諭部会・編 東山書房

②小学校 第3学年 保健「すいみんのひみつ」(指導者 養護教諭 江部紀美子)
【内容】「毎日のけんこうと生活」の学習で、一日の生活を振り返らせる授業を行った後、さらに睡眠に重点を置いた授業を行った。何時に就寝したのかはあまり問題ではなく、何時間眠れていれば大丈夫だと考えている子どもたちが多かった。よい睡眠とは、睡眠時間の長さだけではないことを説明した上で、睡眠不足になると、食欲や集中力の低下、疲れやすくなる、イライラしやすくなることを自分たちの経験から結びつけて考えさせた。また、よく眠ることで、体の疲れをとり、心が落ち着く、記憶を整理する、成長ホルモンが出る、病気から体を守ることを説明した。さらに、よりよい睡眠にするための方法や、朝すっきり目覚めるための方法について、子どもたちと共に考える実践を行った。

③高校 第1学年 保健科「睡眠と脳の健康」(指導者 養護教諭 増田かやの)
【内容】「睡眠・休養と健康」の学習で、睡眠リズムの大切さや睡眠が体のメンテナンスだけではなく心の健康にもかかわることを学習した。質の良い睡眠をとるために何が必要なのか、各自の現在の生活行動を含めて振り返る機会とした。
2020年度、学年の始まりに新型コロナウイルス感染症対策による一斉臨時休業が行われるなど、一時的ではあるものの、子どもたちの現状が見えない期間ができた。同時に子どもたちの家庭の状況も見えなくなった。一斉臨時休業の期間は、普段学校に来ることのできなかった子どもたちにとって、誰もが学校に行くことのできない安心できる時間となった。その一方で、普段学校に来ることで安定が保たれていた子どもたちのメンタルヘルスについても目を向ける機会となった。学校に来ることで安定の保たれていた子どもの背景には、家庭の問題が潜んでいること等が浮かび上がった。子どもたちが不安、心配を抱えた時、自分たちでどのように解消したり、対応したりしていくかということが浮き彫りになった。また、誰かに助けを求めることの必要性も子どもたちに伝えていきたいことを共有した。改めて子どもたちの自己肯定感について皆で話し合う機会につながっていった。それらのことから、自分自身を自分で助ける、セルフケアや、マインドフルネスについて学ぶ機会をもつ必要性を感じるようになった。セルフケアやマインドフルネスの概念は、特定の子どもたちが必要なものではなく、誰にでも必要であることが共有された。  コロナ禍において、学校と子どもの生活が分断され、家庭での生活が見えにくくなった。子どもも同様に学校や友達とのつながりを感じにくくなったと思われる。現在の状況からも、教師は子どもの生活を分断するのではなく、より繋げていく意識を持つことが大切であると考えられる。
2021年度、心のセルフケアなどのメンタルヘルスにかかわるアプローチについて、子どもたちとの学びや保護者への啓発の質を上げていくために、部会のメンバーで学ぶ機会を設けた。お茶の水女子大学の橋本有子先生にご協力いただき、ソマティクスという概念について研修をした。ソマティクスとは「全体性のある生きるからだ(living body=soma)を内側から捉え、からだのAwarenessや他者を含む環境との相互関係に目を向けていく実践や研究領域<T.Hannaの定義をもとに解釈>」という概念である。また橋本先生とは、高校生や中学校と連携し、保健体育科の授業や放課後活動の時間を使ってヨガを主においたレクチャーを行った。体を動かしながら、まずは自分の体の感覚を知る、呼吸を意識するという時間をもつことが、これまでもメンタルヘルス教育で取り上げてきたマインドフルネスを理解する一助になると考えた。マインドフルネスの「『今、この瞬間』を大切にする生き方」は理解できても、集団で生活する学校という場では、自分だけに目を向ける時間は難しい。そのため、自分のからだに目を向ける時間を確保して体感できることを期待し、今後も継続して実施していきたい。また、昨年度から検討実践してきたメンタルヘルス教育の必要性と学校園全体で取り組む「横(教科間)」と「縦(発達段階)」を意識したカリキュラム編成について、養護教諭関東地区会において「発達段階に沿ったメンタルヘルス教育の実践」と題して、発表した。
昨年に引き続き、教師が子どもたちの生活に思いを馳せること、繋げていく意識を持って学びの機会をもつことの重要性を共有してきた。中学、高校の実践を見通し、小学校、幼稚園がどのように繋げていくかは課題である。しかし、小学校、幼稚園はその種まきの時期であることは確かであり、保健だよりでマインドフルネスという言葉に触れたり、教科の保健学習の中で取り上げたりするなど、教師が繋げていく意識を持つことで、中学、高校といったその後の発達段階で自分に必要なときに、再びクローズアップされ、新たな情報とともに各自の中に吸収されて活用されていくこととなると考える。

(3) 本部会の成果発達を支える視点について、様々な視点から子どもの姿を見てきた。これまで、からだや心、食、睡眠、人間関係(親子関係含む)などに焦点を当ててきて感じたことは、子どもの特性や生活、背景を丸ごと見ていく重要性である。昨今は新型コロナウイルス感染拡大防止対策により学校園閉鎖が行われた期間があったことなどもあり、子どもたちの閉塞感は増していると考える。このような現状下、なかでも子どもたちのメンタル面についてもこれまで以上に厚く支援しなくてはいけないと考える。また同様に保護者のメンタル面を支えなくてはいけない状況も感じる。そしてその支援の方法としては、子どもたちのメンタルヘルスをアセスメントに限らず、予防に力を入れる必要性が高いと考える。子ども自身の自己肯定感を自分で助ける、友達と助け合える、気にかけあえることの必要性を感じている。また、メンタルヘルスに係る教材化を進めていくことについて、発達段階に合わせて実施する内容を吟味して、スパイラルに学ぶ機会を意識的に設けることで、子ども一人ひとりに合った習得機会を逃さず、身につけていくことにつながっていくと考えている。カリキュラムについては、現段階ではこれまでの実践の履歴を記載するかたちで構成しはじめている(図2)。今回のようなメンタルヘルスに関する取り組みについては、その時期の子どもたちの様子をよく知る教師とで連携して、学ぶ時期や内容を見極める必要があると思われる。そのため、実践の履歴や積み重ねをもとに目の前の子どもに応じて取捨選択する選択肢とするためのものとした。また、実践の履歴であることは、高校は中学校の学びを引き継ぎ、中学校は小学校の学びを引き継ぐといった、教師間の連携に大きな役割を持つと考える。

参考文献等
◯三池輝久(2016)「小児慢性疲労症候群とは」,『教育と医学』2016年6月号,p58-67,慶應義塾大学出版会 ◯根本橘夫(2016)「現在の子どもたちの「過敏」の問題」,『児童心理』2016年2月号,p12-18,金子書房 ◯藤井靖(2016)「不登校の子どもの過敏さ」,『児童心理』2016年2月号,p55-61,金子書房 ◯林隆・平中健也(2014)「決まって給食を食べ残す子への指導」,『算数教科書教え方教室』2014年12月号,p66-67,明治図書 ◯伊藤直樹(2015)「生活リズムが乱れると何が問題か-睡眠リズムの乱れと心の成長・発達」『児童心理』2015年6月号,p12-18,金子書房 ◯高宮静男/河村麻美子/石川慎一/大谷恭平/植本雅治(2015)「子どものメンタルヘルスと心身症」『心身医学会誌』Vol55 No12,p1323-1328,心身医学 ◯おおたとしまさ(2015)「追いつめる親『あなたのため』は呪いの言葉」 毎日新聞出版 ◯増田かやの(2018)「シークレットフレンド-秘密の親切行動-」『児童心理』2019年1月号,p90-96,金子書房 〇「『レジリエンス』を育てる本」藤野 博 (監修), 日戸 由刈 (監修) 講談社 (2015) 〇「子どものためのマインドフルネス」キラ・ウィリー (著), アンニ・ベッツ (イラスト), 大前 泰彦 (翻訳) 創元社 (2018) 〇「10代のうちに知っておきたい 折れない心の作り方」水島広子著 紀伊國屋書店 (2014) 〇「ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち(新書版)」おおたとしまさ著 ディスカヴァートゥエンティワン (2019) 〇「不安や悩みへの対処としての呼吸法」東京有明医療大学 学長 本間 生夫 https://www.kobun.co.jp/Portals/0/resource/dataroom/magazine/dl/hoken97.pdf 〇「セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク」 伊藤絵美 晶文社(2020) 〇こころの健康副読本編集委員会編「中学校保健体育副読本『悩みは、がまんするしかないのかな』」https://psycience.com/pdf/kokorobookre.pdf 〇参考APP「メイスーン」LAVA提供

 

幼小中高大の接続を意識した開発研究(2022年3月) より抜粋

第4回 統計教育シンポジウム

令和3年3月20日(土祝)10:00~12:00にオンラインにて開催しました。
テーマは、「身の回りの問題を統計的によりよく解決する力を身に付けよう~生きて働く知識を小中高を通して獲得する~」です。
お茶の水女子大学附属学校園教材・論文データベース:https://kyozai-db.fz.ocha.ac.jp/より各学校での実践事例を閲覧いただけます。
・小学校実践事例
・中学校実践事例
・高等学校実践事例
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