研究成果

研究成果 平成30年度までのまとめ

  1. 見えてきた(附属の)子どもを取り巻く環境
    (1)平成28,29年度のまとめ
    (2)平成30年度の活動
  2. 今後の研究について
    (1)子どもを取り巻く環境の問題
    (2)睡眠の問題に着目した背景
    (3)今後の研究予定
  3. 実践事例と参考文献
    (1)お茶大の附属校園で取り組んでいる睡眠にかかわる学習
    (2)参考文献等

以降の活動報告

1.令和元(2019)年度

 

これまでの活動を通して

1.見えてきた(附属の)子どもを取り巻く環境

(1)平成28,29年度までのまとめ

平成28年度は、幼稚園2名・小学校4名・高校1名の7名で行いました。部会のメンバーには、保健に関係の深い養護教諭の他、栄養教諭や学級担任などがいることから、子どもの心をからだ、食事、メンタルヘルスなど、生活の視点から見ていくことが自然と行われました。
一年を通して、各校種のメンバーがいま子どもと関わる中で気になっていることについて、語り合いました。各回の内容は、以下の通りです。

平成28年度の活動内容 場所
第1回 活動内容紹介及びメンバー顔合わせ 中学校
第2回 今後の部会の持ち方について 幼稚園
第3回

高校生(内部進学者)の事例から:各校種の情報から発達を見通す
幼稚園・小学校・中学校、それぞれの校種において見せる姿の共通点と成長の姿があり、子どもたちへの支援について各校種が語っていくことでも発達が見えた。

小学校
第4回

前回の振り返りと今後の進め方
お茶の水女子大学生活科学部の青木研究室と連携したメンタルヘルス調査について

中学校
第5回

食に関することから子どもを見る
食の細い子どもについて、その子どもの背景や偏食傾向と、日常の行動の関連など

幼稚園
第6回

慢性疲労と睡眠から子どもを見る
慢性疲労・睡眠等を視点におき、子どもの様子から睡眠リズムの大切さや、睡眠と不登校の関係、睡眠教育の情報交換を行った。睡眠が関係してくる内容については、家庭との連携も必要ではないか。

幼稚園
第7回

クラスで所在ない、存在感が少ないと感じる子どもについて
子どもがあそびや活動に夢中になれないとき、友だちとのかかわりも深くなりにくいこともあると感じている。自分の居場所や安心感をもつことの大切さ、またそれをどう作っていくか。

小学校
第8回 孤立しがちな子どもの様子、支援から
「孤立」しているように見えて、本人にとっては安定を図っている時間となることの見極めの大切さ。一人でいることの心地よさと仲間といることの安心感の両方の必要性がある。
高校

子どもの姿を話題の中心にし、その様子を語り合うことから分かったことは、子どもたちが見せている姿は、子どもたちの生活と切り離せないということでした。子どもの姿の背景にある、睡眠・食事・友達関係は、これからも継続して話し合っていくことを確認しました。

平成29年度は、中学校を除く、幼稚園2名・小学校2名・高校2名の6名で活動を行いました。話し合いでは、保健室に来室する子どもたちや、教室など校園内での子どもたちの様子から、気になったことなどを語ることから始めました。話し合いを重ねていく中で、睡眠が話題の中心となり、平成30年度は「睡眠」をテーマに進めていくことになりました。各回の内容は、以下の通りです。

 

平成29年度の活動内容 場所
第1回

活動内容紹介及びメンバー顔合わせ

中学校
第2回

子どもたちの育ち合いの中で見られる障害と自己肯定感
子どもたちの相互関係の中で気持ちの壁を乗り越え、自己肯定感につなげていけるようなかかわりを促す。

小学校
第3回

子どもが抱える困難
~「追いつめる親『あなたのため』は呪いの言葉」を読んで~
「教育虐待」と過干渉の関連性、グローバル化を見据えた価値観の転換、自主性を重んじたかかわりの大切さなどが話し合われた。

高校
第4回

睡眠と子どもの姿
子どもの睡眠の実態把握、何を落としどころに睡眠と生活リズムの大切さを学ぶのか、好ましい睡眠習慣を維持させるカリキュラム開発ができないかについての検討。

幼稚園
第5回

睡眠に関するデータの持ち寄りで見えてくるもの
お茶大の青木紀久代先生からの研究示唆に関する報告ならびに幼稚園から高校までを見通した「睡眠」に関する実態を明確にし、各発達段階における指導目標の明確化を進めていくことを確認した。

小学校
第6回

ホームページ掲載用原稿内容の検討

幼稚園
第7回

ホームページ掲載用原稿の読み合わせと修正

小学校

 

(2)平成30年度の活動

平成30年度は、幼稚園2名・小学校1名・高校2名の5名で活動を行いました。主に話題となったのは睡眠についてです。まずは、既に学校園で取り組んでいる実践について具体例を示しながら共有することから始め、校種の違いや特色を活かした様々な視点で検討を進めました。今年度の各回の内容は、以下の通りですが、この他にも、メールで適宜、情報交換を行いました。

 

今年度の活動内容 場所
第1回

活動内容紹介及びメンバー顔合わせ 4/17

中学校
第2回

29年度に行った睡眠についての研究を具体的にどのように進めていくか検討した。過去に実施したデータとの比較等、情報の活用について。

小学校
第3回

小学校と高校で実践している取り組みを報告し、共有した(シークレットフレンド、アンガーマネージメント、メンタルヘルスリテラシー教育、睡眠アプリ、睡眠に関する保健教育で使用したワークシートの記載内容など)。

小学校
第4回

幼稚園で実施する睡眠に関連するアンケート内容(保護者対象)の検討。

小学校
第5回

幼稚園で実施したアンケートの結果について共有。
ホームページ掲載用原稿内容の検討。

小学校

 

2 今後の研究について

(1)子どもを取り巻く環境の問題

学校が忙しいと、ここ最近言われることが増えていますが、子どもたちもまた忙しくなっているということも話されました。小さい頃からたくさんの習いごとをし、学年が上がると塾通いが増え、学校でも多くの課題をこなさなければならない子どもたちもいます。授業中や研修中に寝ていたり、中には、エナジードリンクに頼ったりする子どももいます。
こうした話し合いを重ねていったものをまとめると、大きく分けて二つの問題になりました。一つは、生活習慣にかかわることと、もう一つは人間関係にかかわることです。以下に、話し合った内容を整理してまとめてみました。

①生活習慣にかかわる主な内容
・食をめぐる問題 …偏食の背景には、支援を要する子どもがいること。
・睡眠をめぐる問題…長期休業後に睡眠リズムの乱れが多いこと。
思春期特有の睡眠障害の事例。
スマホやPCの影響も見受けられること。
受験期は特に睡眠リズムの乱れが増えること。
カフェイン入り栄養ドリンクをとる子がいるが、影響はあるのだろうかという疑問。

②人間関係にかかわる主な内容
・親子をめぐる問題…子どもに対する過干渉や、ネグレクトの問題について。
・親自身のメンタルヘルスの問題…子どもとのかかわりへの悩みだけでなく、親自身も子育てへのプレッシャーにさらされることもある。
・他者との距離感に悩む子どもの姿…SNSの問題や友だちとの関係性の作り方など

 

(2)睡眠の問題に着目した背景

これから大人へと成長する子どもたちにどのような視点を育てたいか?ということに立ち返って話し合う中で、これまでの連携研究の時間において語られた子どもの姿から、共通問題としての子どもの「睡眠」の問題に着目しました。家庭の背景にも触れつつ、自立的な生活行動ができる子どもの育成、睡眠行動から望ましい生活習慣を自律的に行うことができる子どもの育成を目指すものです。

さらに、近年「睡眠負債」という言葉が話題になっていますが、「睡眠時間を削ってでも大切なことはあるのか?」という問いを学校で取り上げ、子どもたちから大人たちへ問い直す機会を作り、子どもたちの学びを家庭へ波及させる効果を狙うことを考えました。

現代の大人社会において、軽視されがちであった睡眠をあえて話題にすることで、睡眠に対する大人の意識も変えていくことにつながると良いと考えています。

 

(3)今後の研究予定

附属学校園の精神科学校医の佐々木 司先生(東京大学大学院教育学研究科健康教育学分野教授)とも連携し、これまでの研究(「心の健康質問票」を活用した支援の取り組み)と連動しつつ、現在の子どもの生活に着目した研究を進めていきたいと考えています。
具体的には、お茶大附属としてのメリットを生かし、睡眠の実態調査を元に縦断的な学習目標の内容を提示し、その具体的な方策を検討していきたいと考えています。さらに、本校園の実態調査から見えてくるものとして、以前実施した「心の健康質問票」の生活習慣のデータの振り返りと、新たにデータを取って比較を行うこと、本学附属以外の学校などとの比較検討なども試みたいと考えています。
また、データを取ってよくないところを指摘するのではなく、睡眠ダイヤリーをつけて自覚を促したり、さらに、紙面による記入式の調査だけではなく、高校生に対しては「睡眠管理アプリ」を活用したりして、睡眠状況の把握をする方法も取り入れてみたいと考えています。アンケートやアプリの活用は、単に問題の分析に使用するだけではなく、子どもが自分で記録を取ることの意味を価値づけ、睡眠の状況を自覚することができるような取り組みにしていくことを目指していきます。
そして、最終的には、幼稚園から高校まで一貫した「正しい睡眠習慣を定着させるための教育モデル」を作ることを目的とした研究を目指したいと考えています。

 

3.実践事例と参考図書

(1)お茶大の附属校園で過去に取り組んできた睡眠にかかわる学習

①幼稚園「ねるのきもちいい?」(指導者 養護教諭 渡邉満美)
【内容】子どもたちが眠りについて興味をもち、眠りの気持ちよさを感じることができるように、自由な保育の中で絵本を用いてやりとりを進める実践を行った。同時に、保護者が睡眠について考えるきっかけになるために配布した「保健だより」を資料として載せてある。
「保健室のまなざしからとらえた健康教育~未来を担う子どもたちにつけたい力・育てたい力~」P26~P29
全国国立大学附属学校連盟 養護教諭部会・編 東山書房

②小学校 第3学年 保健「すいみんのひみつ」(指導者 養護教諭 江部紀美子)
【内容】「毎日のけんこうと生活」の学習で、一日の生活を振り返らせる授業を行った後、さらに睡眠のみに関する授業を行った。何時に就寝したのかはあまり問題ではなく、何時間眠れていれば大丈夫だと考えている子どもたちが多かった。
よい睡眠とは、睡眠時間の長さだけではないことを説明した上で、睡眠不足になると、食欲や集中力の低下、疲れやすくなる、イライラしやすくなることを自分たちの経験から結びつけて考えさせた。また、よく眠ることで、体の疲れをとり、心が落ち着く、記憶を整理する、成長ホルモンが出る、病気から体を守ることを説明した。さらに、よりよい睡眠にするための方法や朝、すっきり目覚めるための方法について、子どもたちと共に考える実践を行った。

③高校 第1学年 保健科「睡眠と脳の健康」(指導者 養護教諭 増田かやの)
【内容】「睡眠と健康」の学習で、睡眠リズムの大切さや睡眠が体のメンテナ
ンスだけではなく心の健康にもかかわることを学習した。
質の良い睡眠をとるために何が必要なのか、各自の現在の生活行動を含
めて振り返る機会とした。

 

(2)参考文献等

  • 三池輝久(2016)「小児慢性疲労症候群とは」,『教育と医学』2016年6月号,p58-67,慶應義塾大学出版会
  • 根本橘夫(2016)「現在の子どもたちの「過敏」の問題」,『児童心理』2016年2月号,p12-18,金子書房
  • 藤井靖(2016)「不登校の子どもの過敏さ」,『児童心理』2016年2月号,p55-61,金子書房
  • 林隆・平中健也(2014)「決まって給食を食べ残す子への指導」,『算数教科書教え方教室』2014年12月号,p66-67,明治図書
  • 伊藤直樹(2015)「生活リズムが乱れると何が問題か-睡眠リズムの乱れと心の成長・発達」『児童心理』2015年6月号,p12-18,金子書房
  • 高宮静男/河村麻美子/石川慎一/大谷恭平/植本雅治(2015)「子どものメンタルヘルスと心身症」『心身医学会誌』Vol55 No12,p1323-1328,心身医学
  • おおたとしまさ(2015)「追いつめる親『あなたのため』は呪いの言葉」 毎日新聞出版
    親子の関係性に迫る本著から、親の期待感とそれに応えようとする子どもの姿、自らの道を切り開くことができない子ども、自立心を阻む親の関わりなど様々な事例から分析されている内容を重ね合わせながら、附属における子どもを取り巻く問題について考える機会となった。
  • 増田かやの(2018)「シークレットフレンド-秘密の親切行動-」,『児童心理』2019年1月号,p90-96,金子書房
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