2019年度の報告 (社会科部会)

2019年度は、小学校3名、中学校2名、大学1名の6名で研究を進めました。年度当初に、高等学校地歴科・公民科の先生方とも情報交換の機会を持つことができ、小中高の社会科系教科の連携も進みつつあります。

主な連携研究の内容としては、研究テーマとしている論争問題を取り上げた学習の在り方、公開授業の学習指導案を小中連携の視点からの検討、附属小学校から附属中学校に進学した児童生徒の9年間での社会科の学びの深まりや変化についての分析などを行いました。詳細は以下の通りです。

 

部会の研究テーマ 小中の学習の連続性や発達段階を踏まえた、小中連携の視点からの社会科学習の在り方についての研究(論争問題を中心に)

 

◎中学校の公開研究会「日本の人口~外国人人口の増加~」の授業分析

<授業の主題設定の主眼>

・日本の人口構成と多文化共生の視点(自分たちの地域で、外国人とともに暮らすよりよい社会を作るために必要なことを調査・考察し、提案する授業)

・中学校の研究主題である、「探究的な学び」につなげるための工夫(必要性・必然性のある学びと振り返りを取り入れること)

 

<討議の概要>

○授業の在り方について

・授業が地理なのか、公民なのか。社会科だから分野を超えることにこだわらなくてもよい?「分野」をどのように考えるべきか、地理的分野だからこそできることもあるのではないか。

・子どもたちの提案に対する、リアルな社会での外国人の反応を見てみたかった。外国人が実際に望んでいることからの問題・課題提起も必要ではないか。

・本授業で学んだことをどのように活かせるか。

→「追究の仕方」は今後様々な場面で活かされるだろう。

○中学校の研究主題(探究的な学習)について

・中学校の研究主題は、小学校が目指すものともつながっている。小学校でも探究的な学習と振り返りを大事にしている。生徒自身が課題を見つけたり、設定したりすることはあるのか。

→中学校でも疑問や問いから学習課題を設定することがある。ただ、生徒の関心が低めである内容(外国の歴史、世界地理等)から主体的に課題を見つけさせることは難しいと感じる。ネットニュースでもよいので、社会とつながることが大切であると考えている。

・その際、授業の導入をどうするか。どのように課題と向き合わせるか。小学校ではどのように単元を構成しているのか。

→小学校では、例えば米作りであれば、米袋の読み取りから日本の米作りの課題へつなげている。

・導入から探究をさせていることも大事であると気づいた。作業・課題から探究につなげることもできるだろう。社会科の成り立ちが社会の課題解決から来ているからではないか。他の教科ではどうなのだろうか。

・中高校生は資料から意味を見出して課題を考え追究に向かうことができるが、小学生は生活に結び付いていないと追究するのが難しい。追究の意義や目的を納得しないと追究しないのではないか。

→追究においては、「意味づけ」が大事ではないか。例えば江戸と明治の街並みの比較(長屋から一軒家への変化)は、火事への対応ではないか?といった価値づけ、意味づけ。意味づけすることとは自分ごととして考えることではないか。

○振り返りの方法について

・振り返りの在り方に興味がある。論争問題は振り返りから次の問いを考えていくが、中学校ではどのように考えているか。

→中学校では「フィードフォワード」の振り返りが大切であると考えている。しかし、毎回時間が確保できるわけではない。その日の授業内容を簡単に振り返る程度にとどまることも多い。

・長いスパンでの振り返りを考えたことはあるか。

→中学校では、1学期間を振り返って「学び方」を振り返る時間を設定した。具体的には、ノートを用いて振り返りを行わせた。2学期に学び方が大きく変わった生徒も見られた。また、他者の学び方から、自分の学び方の改善点に気づく生徒がいた。

○その他

・現6年生が5年生の時に、外国人労働者問題を扱っている。今後の小中の連携がとれるとよい。

追記:2020年度、中1になってから、世界の諸地域(北アメリカ州)で連携させて取り扱った。

 

◎実践報告と討議

○小学校

外国人労働者問題について考えよう(2018年度の実践報告)

○中学校

・地理的分野 「世界各地の人々の生活と環境」~ICTを活用した「生徒自らが問いを立てるレポート」の作成と振り返り(2019年度の実践報告)

・歴史的分野 「近現代の日本と世界」~「自分とつながる戦争」レポートの作成と、ICTを活用した閲覧、振り返り(2018・19年度の実践報告)

・公民的分野 「私たちと現代社会」~ルーブリックを使用したパフォーマンス課題(文化の継承と創造の意義)

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