2018年度の報告 (社会科部会)

2018年度は、本学の岡田了祐先生(社会科教育学)を新たなメンバーに迎え、小学校3名、中学校2名、大学1名の6名でのスタートとなりました。昨年度までの社会的ジレンマ教材についての研究を継続しつつ、新たに次の視点を取り入れた連携研究を行いました。

① 小中の学習の連続性や発達段階を踏まえた社会科学習の在り方についての研究の視点(論争問題を中心に)
② 小学校の研究開発学校のテーマ新教科「てつがく」や、中学校の研究開発学校のテーマ新教科「コミュニケーション・デザイン(CD)科」と社会科の相互関係についての視点

例えば「てつがく」の自己評価に関する議論の中では、②の視点から、次のような議論や問題提起がなされました。

○小学校では、自己評価を重視しているが、中学校ではどうか。
→CD科でも評価規準(作品が伝わったか、どう判断するのか等)をつくり、自己評価している。評価の 客観性や妥当性をどう高めるかが課題である。
〇評価規準がどのようなものであるべきなのか。話し合っていく題材について、評価が変わるのか。
〇評価規準を子ども自身が作ることが学習の一環で、意義があるということに注目したい。
〇自己評価をすることの意義のうち、人間性・道徳性を養うのにどういう効果があるのかという点を考えていくべきである。
〇市民性を育む「てつがく」の授業において、どんな市民性が身につけばよいのだろうか。また、社会科で育てる市民性との違いはあるのか。

一方、論争的問題を通して政治的リテラシーを涵養する授業の在り方を議論した際には、主に①の視点から次のような議論が交わされました。

論争課題「救急車の有料化をするべきかどうか」
○ 子どもが「判断の規準」を練り上げる際に、事実やデータを基にした「判断の規準」からものごとの本質をとらえた「判断の規準」に至るよう深化させていくためには、どうすれば良いのだろうか。
○中学における「効率と公正」との関係は?救急車有料化問題を効率と公正で捉えさせるための授業づくりの可能性を考えると、有料化→効率 有料化しない→公正の視点から中学校でも授業化が可能であろう。また、地方自治、財政、公共サービスの学習の教材として取り入れられるのではないか。
○「有料化しない」ことを主張する時の小学生の論拠は何か。
→高齢者の人数の割合を資料として持ってくる子どもの姿があった。自ら資料を収集する活動につながる。
○小学校での学習を通して身に付けた「判断の規準」が、今後中学校や社会に出てからどのように使われていくかが大切である。成長の様子を継続して調査していきたい。
→これを受けて、附属小学校から附属中学校に進学した生徒が、中学校で記述したワークシートの分析も行った。

 

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