古文入門期における教材のまとめとしての「言語活動」

実践の概要

2020年度は当初、在宅での授業となった。高校に入学したばかりの1年生はほぼ新しく学ぶ古文、漢文を、画面を通して学習することになった。基礎的な知識の習得はそれでもある程度は可能であろうが、それを定着させる機会に個人差が生じる懸念があった。そこで、登校しての対面学習が始まった際に、ふだんはグループワーク等で定着を図るための「言語活動」のみ授業で行うこととした。

学習指導要領上の位置づけ

平成30年度告示の「高等学校学習指導要領解説 国語編」に次のようにある。

第1款 目標

(2)生涯にわたる社会生活における他者との関わりの中で伝え合う力を高め、思考力や

想像力を伸ばす。

これは国語科全体の目標であるが、これを意識して活動できるように考えた。

教材と「言語活動」

1)「検非違使忠明」主人公忠明の人物像を読みとり、認められるところ、認められないところを書き出す。

2)「絵仏師良秀」主人公良秀の人物像を読みとり、その姿勢を肯定するか、否定するかを書き出す。書き出した後、隣と交換し、反論を書く。

3)「大江山の歌」和歌に使われている掛詞をまねして、自分も掛詞を考えてみる。

4)「丹波に出雲といふ所あり」各場面における同行者の心情を考え、最後にかけるひとことを考える。

5)「ある人、弓射ることを習ふに」作者の主張を読みとり、それに反論する。

6)「九月二十日ばかりに」登場人物の行いについて、肯定または否定する。

7)「奥山に猫またといふものありて」異なる本文を校訂する。

8)「花は盛りに」作者の論に反対する論を読み比べ、どちらかを支持する。さらに、ペアで交換して、反論を書く。

それぞれの「言語活動」が主に目指した力は次のようになる。

必要な情報を取り出し、いろいろな観点から考える批判的思考力 1)、5)、6)

新たな問題をみつけ、解決策を生み出すための創造的思考力   3)、4)、7)

他者との共通点や相違点を理解して、関りあう協働的思考力   2)、8)

生徒の作品例

2)自分の職業に誇りを持っている心構えが良い。また、自分のことを顧みてしっかり反省できるのも立派である。

(反論)確かに、自分の職業に自信を持ち、反省できていていい。しかし、良秀の誇りや反省は、相手をけなす方向へと働いていたので、そこは好ましくない。

3)冬の朝 窓からきた(来た/北)風 凍えそう

4)ただのいたずらも子どもであれば感動を与えるものですよ。

6)肯定意見:日常的に相手がいなくても見送りができるというのはとても礼儀正しい姿である。相手がいない時こそ、真の姿が見えると思うから。

否定意見:誰かに見られているからといって普段していない行いをしてよく見せようとするのではなく、ありのままを見せることで真の人間性が見られると思う。でも常日頃から心掛けることは難しいことだし、何かしら裏表があってこその魅力ということもある。

8)物事が終わる様子や達成できないことも悪いことではないが、わざとそちらを好んで求めるのは違う。残念なことに変わりはない。

(反論)「残念なこと」は確かにそうである。しかし、その残念さに、趣を見出すことができる人こそ本当に感受性がある人なのだろう。「残念なこと」それだけで終わらせるのではなく、そこに情趣を入れることで、より一層深く考えさせることが出来るものだ。「残念さ」を感じつつも、そこに一つの感情を含ませ、多くの人に風情を伝えるのもよいだろう。

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