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事例報告
選択と共有をくり返す中で、自分の学びを意識する「ことばの学習」(小学5年生)
お茶の水女子大学附属小学校 岡田博元
【実践の概要】
週5時間の国語授業(2時間「書くこと」、2時間「読むこと」、1時間「言語事項+α」)。
「読むこと」では、RW(リーディングワークショップ)の手法を取り入れている。RWの構成要素は以下の通り。
①児童が自分たちで読む教材を選択する。 ②本の選択に基づいて一時的なグループが作られる。 ③異なるグループは異なった本を読む。 ④グループは計画を立てて定期的に集まる。 ⑤覚え書き(言葉や線画)を話し合いのために使う。 ⑥話し合いの話題は児童から出される。 ⑦グループは本についての自然な話し合いを目指す。 ⑧教師はグループの一員や指導者ではなく促進者を務める。 ⑨評価は教師の観察と児童の自己評価によって行う。 ⑩遊び感覚と楽しみの精神が部屋に広がる。 (以下略) |
ゆれる心を読む~一人称の作品から自分にとっての意味を考える~
重松清「正」文春文庫『小学五年生』より
重松清「カレーライス」光村図書5年『銀河』
重松清「あいつの年賀状」三省堂5年『広がることば』
【実践のポイント】
「カレーライス」
- 主人公はなぜ父に謝りたくないのか
- 親子の心のすれ違い
- なぜヒロシはカレーを作ったのか
- 意地の張り方が変わってきたのはどうして?
- なんで主人公が作ったのがカレーだったのか?
- 情景描写で何を表したかったのか?EX)甘ったるい、中辛、ぴりっと辛く てほんのり甘かった。
- なんで謝ったらまた叱られると思ったの???
- ヒロシはなぜなかなか謝れなかったのか。
「あいつの年賀状」
- なんでケンカの様子や理由が書かれていないのか
- 「終業式の日」という設定
- 二つのタコがくっついたりはなれたりという描写の意味
- 僕の心情の変化を読む。特に空に浮かぶ凧のシーン
- 突然の別れから少年は何を学んだのか。
- 裕太と僕の心情を、時間の流れに沿って別々に整理してみる。
「題名のない(正)」
- 最後の一文、「いつまでも跡がうっすらと残っていた」の意味と、その時 の少年の気持ち
- なぜ、題名が正<セイ>なのか?
- 学級委員になりたくないのに、選ばれたい
- 「本気の本気で面倒」など心の表情
- 選挙の前と後の「少年」の心情の変化。
- 題名は何か?(少年と紺野君の学級委員に対しての見方)
- 少年と紺野くんの人物像は?
- 少年の気持ちの変化(選挙の前後の変化に注目して)
〇要点駆動の読み
- 物語の中にしかけられた要点(複数の解釈が起こるよう な部分)をエネルギーとして、探究的な読みを駆動させることをさしている。
- 「結束性方略(一貫性の高い説明を与えようとする)」
- 「物語表層方略(言葉の特徴に着目しようとする)」
- 「交流方略(作者とのコミュニケーションをもとうとする)」
〇社会構成主義的学習観
- 学びの整合性・一貫性・安定性
環境に対して選択的に関わりつつ意味を構成していく
- 学びのコンテクスト依存性
子どもは社会文脈・生活的文脈において有能に学び続ける存在
- 学びの知識表現の多面性
概念を多面的な表現(イメージやエピソードとのリンク)によって把握
- 学びの組み替え性
概念や知識を累積的に学ぶのではなく、科学知と生活知、学校知と 日常知の関係を調整し、組み替えつつ学ぶ。
古文入門期における教材のまとめとしての「言語活動」
実践の概要
2020年度は当初、在宅での授業となった。高校に入学したばかりの1年生はほぼ新しく学ぶ古文、漢文を、画面を通して学習することになった。基礎的な知識の習得はそれでもある程度は可能であろうが、それを定着させる機会に個人差が生じる懸念があった。そこで、登校しての対面学習が始まった際に、ふだんはグループワーク等で定着を図るための「言語活動」のみ授業で行うこととした。
学習指導要領上の位置づけ
平成30年度告示の「高等学校学習指導要領解説 国語編」に次のようにある。
第1款 目標
(2)生涯にわたる社会生活における他者との関わりの中で伝え合う力を高め、思考力や
想像力を伸ばす。
これは国語科全体の目標であるが、これを意識して活動できるように考えた。
教材と「言語活動」
1)「検非違使忠明」主人公忠明の人物像を読みとり、認められるところ、認められないところを書き出す。
2)「絵仏師良秀」主人公良秀の人物像を読みとり、その姿勢を肯定するか、否定するかを書き出す。書き出した後、隣と交換し、反論を書く。
3)「大江山の歌」和歌に使われている掛詞をまねして、自分も掛詞を考えてみる。
4)「丹波に出雲といふ所あり」各場面における同行者の心情を考え、最後にかけるひとことを考える。
5)「ある人、弓射ることを習ふに」作者の主張を読みとり、それに反論する。
6)「九月二十日ばかりに」登場人物の行いについて、肯定または否定する。
7)「奥山に猫またといふものありて」異なる本文を校訂する。
8)「花は盛りに」作者の論に反対する論を読み比べ、どちらかを支持する。さらに、ペアで交換して、反論を書く。
それぞれの「言語活動」が主に目指した力は次のようになる。
必要な情報を取り出し、いろいろな観点から考える批判的思考力 1)、5)、6)
新たな問題をみつけ、解決策を生み出すための創造的思考力 3)、4)、7)
他者との共通点や相違点を理解して、関りあう協働的思考力 2)、8)
生徒の作品例
2)自分の職業に誇りを持っている心構えが良い。また、自分のことを顧みてしっかり反省できるのも立派である。
(反論)確かに、自分の職業に自信を持ち、反省できていていい。しかし、良秀の誇りや反省は、相手をけなす方向へと働いていたので、そこは好ましくない。
3)冬の朝 窓からきた(来た/北)風 凍えそう
4)ただのいたずらも子どもであれば感動を与えるものですよ。
6)肯定意見:日常的に相手がいなくても見送りができるというのはとても礼儀正しい姿である。相手がいない時こそ、真の姿が見えると思うから。
否定意見:誰かに見られているからといって普段していない行いをしてよく見せようとするのではなく、ありのままを見せることで真の人間性が見られると思う。でも常日頃から心掛けることは難しいことだし、何かしら裏表があってこその魅力ということもある。
8)物事が終わる様子や達成できないことも悪いことではないが、わざとそちらを好んで求めるのは違う。残念なことに変わりはない。
(反論)「残念なこと」は確かにそうである。しかし、その残念さに、趣を見出すことができる人こそ本当に感受性がある人なのだろう。「残念なこと」それだけで終わらせるのではなく、そこに情趣を入れることで、より一層深く考えさせることが出来るものだ。「残念さ」を感じつつも、そこに一つの感情を含ませ、多くの人に風情を伝えるのもよいだろう。