高等学校

事例1:書籍を通して調査・考察するレポート作成(高1・高2)
2018年掲載

実践の概要

高等学校国語の授業では、読むこと・書くこと・聞くこと・話すことを通して、伝え合う力を高め、思考力を伸ばし、心情を豊かにすることをねらいとしている。特に大学との連携により、学年ごとのテーマに即して良質の文章を多く読み、読書力はもちろん思考力と表現力を伸ばす学習に力を入れている。
育成したい「資質と能力」は以下の通りである。

  • 他者と協働して教材を読解する態度と力。
  • 他者の考えを理解し認める力。
  • 文章を多面的・批判的に読む態度と力。
  • 他者に対して自分の考えを表明する表現力。

レポート作成の概要

年2回、自らテーマを設定し「レポートおよびフリップ(プレゼンテーション用資料)の作成」とその「発表」活動を行っている。夏季休業期間中には、1冊の新書を軸にし複数の資料に当たって調査を行う「新書レポート」、冬期休業期間中には、複数の資料に当たって調査を行う「1年間の国語の学習の総まとめとしてのレポート」を課している。

レポート作成の目標

  • レポート作成を通して、生徒個々人の興味ある分野への理解を深めさせ、論理的思考力を育成する。
  • レポート発表や質疑応答を通して、プレゼンテーション能力と論理的コミュニケーション能力を高める。
    また、指導にあたっては、レポートの書き方や文献引用の方法等のスーパーグローバルハイスクール(SGH)の探究学習に必要な基礎的知識も与えている。

レポート発表の流れ(2時間相当)

〈1時間目〉グループ内発表

  1. クラスを6つの班に分ける(一班が6~7人になるように)。
  2. 班長と記録係、計時係を決める。
  3. 自分のレポートについて1人3分で発表する。その際、準備してあるフリップを使って、わかりやすい発表を心がける。
  4. その後、質問の時間を2分程度取る。必ず1つ以上は質問をする。
    ・班長は、進行役を務める(質問を促す等)。
    ・記録係は、質問を記録する(記録用紙有り)。
  5. 全員の発表が終わったら、班代表を選ぶ。
    ※班代表を決める時の観点
    ・レポートの調査、考察がしっかりできているか。
    ・引用部分がはっきりしているか。自分の意見と区別しているか。
    ・「売り」が明確か。
    ・わかりやすく魅力的な発表か。
    ⇒「他の人にも聞かせたい」と思うもの。

〈2時間目〉クラス発表

  1. 1班から順にグループ代表の生徒が教室の前に出て発表をする。聞いている生徒は、「班代表発表記録用紙」に評価と感想を書く。質疑の時間を入れて、全体が1人5分。
  2. 6人の発表が終わったら、一番よかった(高得点の)発表に○をつけ、参考になった点などを書く。

 

事例2:グループで作る「オリジナル 文学史」(高2)
2019年掲載

実践の概要

平成26年12月の文科省答申において、高等学校教育で育むべき「生きる力」が「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」で構成されるとされ、「確かな学力」については三要素が示された。「(ⅰ)これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を養うこと、(ⅱ)その基盤となる「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと、(ⅲ)さらにその基礎となる「知識・技能」を習得させること。」この3点である。

高校2年生で行う文学史の授業でこの「確かな学力」の三要素を満たすような授業を目指して実践を行った。

実践の概要(上代の場合)

第1時 副教材である「文学史」の問題集の上代に関する部分を各自で解いたうえで、4~5人のグループで答え合わせを行う。答え合わせをしながら、上代で重要なことは何か、話し合うようにする。

第2時 第1時の話し合いの成果をもとに、B4版1枚の紙に、自分たちのオリジナルの文学史を作成する。文学史であるから、時間の流れを軸にしてもよいし、文学史ではあるが、何かの作品を集中して取り上げてもよいと指示をしておいた。

各グループのもののうち、時間の流れを軸にしたものと作品を軸にしたものでわかりやすいと思われるものを印刷し、全員に配布した。定期考査で上代文学史として10点分をそこから出題した。

以下に、作品の例を挙げる。

 

事例3: 絵本に題名をつける
2020年掲載

実践の概要

お茶の水女子大学附属校園の国語科の教員で構成されている連携研究会「ことば・国語」部会で、小学校の廣瀬修也教諭が小学校1年生の授業として「あいしているから」(『しょうがくせいのこくご 一年 下』三省堂)という物語の実践報告を行った。内容が興味深いものであったので、高校でも何らかの形で扱えないかと考えた。いろいろ調べていくと、この話はイギリスの絵本が元になっていることが分かった。2022年度からスタートする高等学校の新学習指導要領では、他教科とのタイアップも推奨されていることもあり、英語の絵本から物語の内容へと発展させる授業を構想した。持ち授業の関係で高校2年生での実践とした。

授業の準備

教科書の元になった絵本を購入した。

『あいしているから』マージョリー・ニューマンぶん パトリック・ベンソンえ 久山太市やく 評論社 2003年10月10日初版発行

引き続いて、英語版を購入した。

『Mole and the Baby Bird』by Marjorie Newman  illustrated by Patrick Benson

First published in Great Britain in 2002 by Bloomsbury Publishing Plc

さらに、英語版を表紙を除いてコピーしたものを6部用意した。

教育課程上の位置づけ

平成30年度告示の「高等学校学習指導要領解説 国語編」に次のようにある。

第3章「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」

1 指導計画作成上の配慮事項

〇 他教科等との関連

(5)言語能力の向上を図る観点から、外国語科など他教科等との関連を積極的に図り、指導の効果を高めるようにすること。

(略)

指導計画の作成に当たっては、他教科等との内容の系統性や関連性を考慮することが

求められる。その際、国語科と同様、言語を直接の学習対象とする外国語科との連携は

特に重要なものとなる。

この部分を先取りすることを意識し、将来的には他教科との連携にも踏み込むことも予想しながら授業を構想した。

授業の流れ(2時間相当)

1時間目

クラスを6分割し、各グループは英語版の絵本のコピーを受け取り、読解する。

次に、内容を踏まえて、絵本に題名をつける。

題名は日本語でも、英語でもよいとした。

候補を挙げて、絞っていく過程もワークシートに記入する。

決定した題名を次の時間にクラスでプレゼンするので、その準備をする。

2時間目

各グループで付けた題名をプレゼンする。

5分以内、形式は自由。

すべてのグループが終わったら、一番いい題名と思われるものを選ぶ。

英語版の題名、日本語版の題名を明かす。

最後に自己評価シートに記入する。

 

2019年度、3クラス上位2つは次のような題名であった。

2年蘭組 「かわいい鳥には」 「Because He Loved It」

菊組 「だいすきだから」 「ふたりのしあわせ」

梅組 「“好き”だから…」 「モールと小さなおともだち」

なお、本校は各学年、蘭、菊、梅の3クラス編成である。

英語版の題名は「モールと小さなおともだち」に近く、発表するとそのような題名を付けたグループが湧く。いっぽう、日本語版に近いグループも日本語版の題名を発表すると湧く。その上で、両者にはどのような違いがあるのか、考えさせる。英語版の題名は登場人物を示し、内容には関わらないが、日本語版は訴えたい内容を端的に示していることが分かる。そこから文化の違いや日本における国語教育、特に「物語」「小説」の読解の重点は何かという話に発展させてコメントする。

 

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