英語科×美術科コラボレーション題材実践研究報告
附属中学校 美術科 桐山瞭子
1.題材について
本題材は、英語科で実践された「Let’s create a digital picture-story show!~デジタル紙芝居に挑戦!~」(授業者:中島義和教諭)の単元において、紙芝居作成の活動が設定されていたことをもとに、美術科の題材として紙芝居の挿絵制作をグループで行った活動である。それぞれのグループ(6~7名)は、英語科の授業内で会社として設定し、各グループには社長やアート主任の役割を持った生徒がおり、会社のロゴマークデザインなども行っていた。
紙芝居の内容は、小学校国語の教科書で扱われている「お手紙」(アーノルド・ローベル作、三木卓訳『ふたりはともだち』より)である。英語科では、本紙芝居を幼稚園児や小学生に向けて制作することを目的としていた。そこで、視覚的に訴える要素の強い挿絵が担う役割の重要性を考え、相手に物語の内容を効果的に伝えることのできる表現を目指して単元の設定を行い、紙芝居の制作活動を美術科と合わせて実践した。また、美術科で既に学習していたモダンテクニック(マーブリング・スパッタリング・デカルコマニー・バチック・フロッタージュ・スクラッチ・ドリッピング・コラージュ)の中のいずれかを選択して使用することとしていた。このことで、生徒たちが以前に習得していた技術を様々な場所で必要性を感じながら汎用的に活用、表現することができたといえる。
本題材の挿絵制作は、美術科が配布したワークシートをもとにグループでの制作会議から始まった。ワークシートでは、制作会議を行う上で“個人の心得”として、物語の内容の「状況」「感情」「構図」を考えるよう提示した。これは、場面毎に展開されている状況や登場者の感情を理解した上で挿絵全体の構図を考えることで、紙芝居一枚一枚が伝えたい内容を効果的に表現することができると考えたからである。また、本題材の大きな特徴として、6~7名のグループでひとつの紙芝居を制作するため、表現そのものにある一定の統一性をはからなければないことが挙げられる。この点は、個人の制作が大半を占める美術科の題材では普段の授業にはない特徴である。そこで、前述の“個人の心得”と合わせて“グループの心得”として、「主役の描き方」「使用画材」「色調」「アウトラインの太さ」を提示した。これらの“個人の心得”と“グループの心得”を理解した上で制作会議が開始され、制作が行われた。各グループのアート主任(美術における表現を比較的得意とする生徒が設定されている)は、特に“グループの心得”において提示された内容を、主になって決定していく役割を持って活動を行った。どの場面を挿絵として表現していくかについても、アート主任を中心とし、グループで骨組みしながら制作を進めた。
2.学習者の姿
本題材を通して、生徒たちは中学校で初めて美術科の絵の表現において協働の作品をつくりあげることとなった。この活動では、個人の制作活動や表現からは見ることのできない、様々な姿を見取ることができた。そのひとつとして、とりわけ思春期に多くなる絵の表現の苦手意識を持った生徒に対し、絵の表現を得意なこととして行える生徒が表現の手助けをする場面が多くのグループで見られた。複数枚に渡るそれぞれの紙芝居の頁には役割分担した上での担当者がついていたが、“グループの心得”を設けていたことで、協働して制作することの意識が高まっており、どの頁にも関わっていくことを抵抗なく行えていた。また、手助けされる側も、手助けしてくれる相手に影響されながら、徐々に挿絵として表現していくことへの抵抗感が和らいでいたことが感じられた。これは、時間を追うごとに積極的に活動する生徒の姿から見受けられたことである。
英語科が目的としていた、幼稚園児や小学生に向けて制作することで、表現の先にある相手への意識づけにもつながり、相手を思って表現することになれたと実感できた。美術科においても、生徒たちが表現の活動を行う上で、大切なことを意識しながら実践できた題材であると考えている。この作品が実際に幼稚園児や小学生の目に触れ、心に触れた時、生徒たちは表現の喜びを実感できるだろうと考えている。